2008.4.26-27
MELL EXPO 2008報告
【パビリオン】
□1)「マスメディアと市民の回路」〜マスがコミュニケーションする時代〜
「マスがコミュニケーションする時代のマス・メディアと市民の回路つくり」をテーマに掲げたマス・メディア・パビリオンでは、新聞協会、民放連、民放8局、1企業の出展がありました。民放連プロジェクトなどで、すでにメディア・リテラシー活動に取り組んできた各局(青森放送・テレビ信州・テレビ長崎・山口放送)からは、民放連プロジェクトでの成果や、その経験をベースとした、局外の市民・官・学との連携し新たな段階への取り組みなど報告されていました。また、メディア・リテラシー活動には消極的と言われがちだった民放キー局準キー局からも3局の出展があり(TBS・テレビ朝日・読売テレビ)、出前授業や番組作りなどを通して、視聴者との間の回路を作っていくための継続的な試みも行われ始めています。
今日的な試みとして注目を集めたのは、パビリオン1の会場と富山をIP回線で繋いで行われた、富山チューリップテレビのネット中継ミニトークセッションでした。会場の一角に設置されたパソコンのモニターには、かねてから番組作りなどでチューリップテレビと連携している住民ディレクターの皆さんの姿が映し出され、水越先生、ギャレスさん、ナナタンさんはじめ、EXPO会場参加者との活発な対話が実現しました。また、これまでメディア・リテラシーとはあまり結び付けて語られることがなかった一般企業と消費者等との会話「ステークホルダー・ダイアローグ」をめぐる試みの出展も(アサヒビール)、メディア環境の変化の中での「マス」との回路についての、新しい視点を提供していただいたと思います。
今回、パビリオン1では、「マス・メディア領域」と区分してしまうと、どうしてもマス・メディア関係者に閉じてしまいがちとなる傾向を、何とか開くことはできないかという想いをこめて、出展者それぞれの地元銘菓を持ち寄り雑談空間を作ったり、領域を超えてメディア・リテラシー活動に関わる課題をつのる「メディア・リテラシーお悩み屏風」を設るなどの試みをしてみました。(「お悩み屏風」については別途報告)。EXPO全体の展示や、ゲストによるプレゼンテーション、トークセッションなどを通して、改めて感じたのは、情報の送り手=プロ、受け手=アマという区分けを前提としたメディア・リテラシー論は、今日のメディアの現実に対応できなくなってきたということでしょう。このようなメディア環境の中で、「マス/市民/教育」という領域の間にいかに回路をつくっていくことができるのか、その中でマス・メディアが担っていかなくてはいけないものは何なのか。改めて多くのことを考えさせられた2日間でした。(報告者:古川柳子/メル・プラッツ運営メンバー)
パビリオン担当メンバー:砂川浩慶(立教大学)、林田真心子(東京大学大学院)、古川柳子(テレビ朝日編成制作局・東京大学大学院)、本橋春紀(放送倫理・番組向上機構)、山内千代子(RAB青森放送)
□2)「グラスルーツ・コミュニケーション」〜市民・オルタナティブ・コミュニティ〜
13の団体・個人が出展した「グラスルーツ・コミュニケーショ ン」。絵本づくりのワークショップから里山保全活動、それに地域と大学との連携プロジェクトまで、多岐にわたる内容の展示がおこなわれました。
グラスルーツ・コミュニケーションという言葉は「マスメディア」や「教育」、「文化」といった他のパビリオンのキーワードと比べてもイメージが漠然としています。正直言って準備段階では、展示間のつながりを不安に思う気持ちがコーディネーター側にもありました。しかし蓋を開けてみると、それはまったくの杞憂だったことが明らかになりました。
なぜならいずれの展示からも一様に、自分たちの周囲に新しい関係を生み出していくためのきっかけとしてメディアを利用しようとする方々の強い熱意が伝わってきたからです。そして何よりも、そういった方々がお互いの活動を知り、意見や情報を交換する場としてパビリオンが機能したこと自体が、すぐれたグラスルーツ・コミュニケーションの実践に他ならなかったからです。
さらにもうひとつ印象に残ったことがありました。お互いにヒト・モノ・カネ不足を嘆きながらも、自らの活動に取り組む皆さんの姿勢がとても前向きだったことです。植物と同じように、適度に乾いた環境の方が、活動の根も太くたくましく育つのかもしれません。目標をしっかり見据え、その実現のために奔走する皆さんの姿を見て自分も励まされる。そんな得難い体験をしたエキスポの2日間でした。(報告者:見城武秀/メル・プラッツ運営メンバー)
パビリオン担当メンバー:小川明子(愛知淑徳大学)、見城武秀(成蹊大学)、崔銀姫(佛教大学)、鳥海希世子(湘南市民テレビ局・東京大学大学院)
□3)「メディアと教育」〜学校でのメディア教育の現状〜
「メディアと教育」は計17の個人、団体が参加しました。大きく分けると、【中学校・高等学校での実践】、【大学での実践】、 【NPOや研究会と企業の活動】、【海外の事例】の4つのテーマになります。会場では、対象年齢が中学校から大学へ、活動の場が学校の中から社会へと広がる形で展示を配置し、隣のパビリオン2にスムーズにつながることを意識しました。
学校教育を対象とした展示では、それぞれの発達段階にあわせて、イメージを映像化したり共有化していく手法や映像制作経験を学びにつなげていく工夫、メディアリテラシーをどうやってカリキュラムに位置付けていくかなどについての発表がありました。NPOや企業の活動については対象が学校内にとどまらないため、いかに社会と結びつけていくか、活動をどう説明していくかということなどについてが報告され、またゲストスピーカーの呉翠珍さんをはじめとする台湾政治大学媒体素養研究質メンバーの出展や、トロントのメディアリテラシー教育など海外の貴重な事例も紹介されました。
参加者からは通常こうした発表は公教育の枠組みの中だけで行われており、今回のような他のパビリオンと連続して見る中であらためて教育の場でのメディアについて俯瞰的にとらえられたという意見や、学校の中だけに通じる言葉でなく、一般社会に通じる言葉で説明していくことが特に教師には必雄ではないかという意見が寄せられました。
今回は時期的な問題もあり、幼稚園・保育所、小学校の展示があまりありませんでしたが体系的にメディアと教育について考えていくひとつのきっかけととなりました。(報告者:宇治橋祐之/メル・プラッツ運営メンバー)
パビリオン担当メンバー:宇治橋祐之(NHK学校教育番組部)、駒谷真美(昭和女子大学)、高宮由美子(NPO子ども文化コミュニティ)
□4)「文化とコミュニケーションのリデザイン」〜テック・ポップ・エッジ〜
メルエキスポの公募に応じて出展して下さった実践や研究には、言うまでもなく、互いに関連する要素をいくつも見出すことができ、「テクノロジー」、「ドキュメンタリー」、「トランスアジア」といったキーワードによって枠付けられる実践、あるいは「サウンドスケープ」や「音」を中核とする試みが複数ありました。このパビリオンの展示は、一見まとまりが無いようでいて、緩やかに共振している様々な試みを、「文化」という切り口からシームレスにまとめあげ、「文化としてのコミュニケーションをデザインしなおすための、ちょっととんがった試み」としてプレゼンテーションするものでした。
具体的には、三つのサブテーマにもとづいて展示を構成しており、(1)“Technological Vision”では、携帯電話評論家の木暮祐一さんが所蔵する端末のコレクション、モバイル社会研究所の活動紹介、そしてMoDe Project【http://www.mediabiotope.com/projects/mode/】の実践紹介など、モバイルメディアに関する様々な展示のほか、SPIDER PRO【http://www.ptp.co.jp/spiderpro/】というテレビ映像の蓄積・検索システムのデモンストレーションが好評でした。(2)“Cross Cultural Act”では、映像制作やポスター制作、あるいは学習環境の構築を通じて、アジア諸国の学生や子どもたちと交流し、異文化理解を深めるプロジェクトの数々が紹介されました。(3)“Communication Design”はワークショップの紹介が軸となっており、Media Exprimo【http://www.mediaexprimo.jp/】、ドキュメンタリーチャンネル【http://d-ch.tv/】といったプロジェクトの一環としておこなわれた実践のほか、サウンドスケープの視点からメディア・リテラシーを学ぶ教育プログラム、林向達さんによるポッドキャストの公開録音(EXPOdcasting)が注目を集めていました。
お祭り広場(福武ラーニング・シアター)の背面にある細長い空間において、この三つのサブテーマを踏まえたゾーニングは決して明瞭ではなかったのですが、ここで二日間、出展者と参加者が互いに入り交じって交流することを通じて、それぞれの試みが輻輳的に共振しているさまを体験していただけたのではないかと思います。(報告者:飯田豊/メル・プラッツ運営メンバー)
パビリオン担当メンバー:飯田豊(福山大学)、伊藤昌亮(ソフトバンククリエイティブ(株)・東京大学大学院)、ペク・ソンス(神田外語大学)
□5)キオスク(KIOSK)
「キオスク」は他のパビリオンの様に出展公募せず、当日の来場者がメディアリテラシーに関する情報の収集や交換を行うコミュニケーションセンターとなるよう設計した。会場には運営メンバー手作りの「チラシの柱」「掲示板」「伝言板」を置き、来場者が送り手としても受け手としても参加できる場づくりを試みた。
「チラシの柱(フォルダ柱)」は、高さ180センチの段ボール板をはり合わせて三角柱を作り、その側面いっぱいに赤やネイビー、オレンジ、ブラウンなどの箱型フォルダを着けたものである。フォルダにはポスター出展者らメディアリテラシーの担い手の方々に活動を紹介するチラシやブローシャーを自由に差し込んでもらうことにした。また、それらバラバラの資料を整理して持ち帰ることができる「思考整理ツール」として、担当運営メンバーで東京芸術大学助教の宮田さんがデザインした特製バインダの販売を側で行うことにした。
「掲示板」には全パビリオンのポスター出展一覧表や海外ゲスト講演など当日スケジュール、フロアマップを貼り出した他、これまで開催してきたメルプラッツ公開研究会の様子を紹介するコーナーを設けた。また、ポスター出展者の情報については、取得している助成金などそれぞれの活動状況を詳しく聞いたデータをまとめ、掲示板近くのテーブルと椅子でゆっくりと閲覧できるようにした。
「伝言板」はキオスクスペースに立つコンクリート柱をぐるりと大きな白い紙でくるんだもので、展示の宣伝や感想、コメントなど自由に書いてもらえるようにした。
当日、特に目立っていたのが大きな3本の「チラシの柱」だった。空のフォルダにポスター展示者らが自分たちの活動のチラシやパンフレットを入れ始めると、フロアは俄かに活気づいた。「柱のどこにおくか」「なるべく目立つようにするには」などの声と共に、多くの人の目線が集まる場所には次々と資料が置かれた。
一方、実際に使用し始めると困ったことが出てきた。用意した箱型フォルダはA4サイズの資料がすっぽりと入る丈夫なものだったが、段ボール素材なため不透明で外から何の情報が入っているかわかりづらい。フォルダの表にペンで出展名や資料内容を書くようにしようか、など運営側は対応を検討し始めたのだが、出展者の方々は資料を一部抜き出して外側に貼ったり、ポップなイラストをつけたり、個性あふれる見せ方の工夫をし始めた。出展者のアイディアに助けられると同時に、こうした自然発生的な場のしつらえは予想外で、主催者にとってうれしい驚きとなった。
にぎやかな他の場所に比べると、地味でひっそりとしたパビリオンではあったが、その分、落ち着いてじっくりと情報を読み、収集することができ、今後のメディアリテラシーの活性化につながる意義のある場になったのではないかと思う。担当者はみな安堵とうれしい気持ちの中、エキスポを終えることができた。ご来場、ご協力をいただいたみなさん、ありがとうございました。(報告者:土屋祐子/メル・プラッツ運営メンバー)
パビリオン担当メンバー:土屋祐子(広島経済大学)、宮田雅子(東京芸術大学)、村田麻里子(関西大学)